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所属スクールが消滅したら花の資格はどうなる?

所属スクールが消滅したら花の資格はどうなる?

サイトのゲスト様から、何回かこの質問をメールでいただいています。

「所属スクール(教室)が無くなったら、私の持っている免状は紙切れなのでしょうか?」

この質問への答えは、Yesでもあり、Noでもあります。
発行元が消滅した免状類は、ある意味においては紙切れになることもあり、ある意味においては無駄になりはしない、というのが答えです。
そもそも、母体スクールが無くなるのと、個人教室が一つ無くなるのでは、かなり話が異なりますので、そこから解説いたします。

免状の発行元が無くなるのと、免状申請した教室が無くなるのは話が別

まず、「自分が通っていた教室が無くなった場合」について解説します。

ここでは、
「母体スクール=〇〇フラワースクール」
「教室=△△フラワー教室」
とします。△△フラワー教室は、〇〇フラワースクールに所属する一教室と考えてください。(個人教室だけでなく、カルチャーセンターの講座などでも同じことです)

この場合、△△フラワー教室が無くなっても、その教室から申請した免状は、効力をなくしたりはしません。これは、当然のことです。
そうしないと、教室消滅後、生徒さんが〇〇フラワースクールの別教室に移ったときに、また一番下の免状から取りなおすことになってしまいます。そんな馬鹿なことがあるわけがありません。

常識的に考えて、いけばな流派であれ、フラワーアレンジメントやプリザーブドフラワーのスクールや協会であれ、この考え方を採用しているはずです。
自分の通っている教室が急になくなったりしたら、がっかりしたり、困ったりすることはいろいろあると思いますが、
「私の免状は無効なの?」
という心配は無用です。

一教室と、免状の発行元との関係について

教室と、免状の発行元との関係についても一般的なことを書いておきます。

ほとんどの花の資格は、上に上がっていくと、「指導可の資格」になっていきます。
そして、「指導可」となる資格を取ったときに、たいてい、母体スクール・団体から、レッスンプロとしての「登録」をする誘いを受けます。この登録をすると、免状を申請できる(=生徒さんに免状を取ってあげられる)先生になれます。

つまり、免状を発行するのは、母体スクール・団体なのです。各教室の先生は、母体スクールと生徒さんの仲介人です。仲介人が廃業したり、亡くなったりしても、発行母体が健在なのであれば、そこから出た免状に、何の変化も問題もありません。

(わずかな可能性として、教室の先生が不正な免状申請をしていて、そのために母体スクール・団体から指導取り消し処分されるようなことがあった場合、「問題アリの教室の免状」に不利益がでるようなことが無いとは言い切れませんが……かなりのレアケースです)

もしも母体スクールが無くなったら、「免状」は紙切れ?

「スクール消滅」の話に戻りましょう。母体スクールからして無くなってしまったら、免状取得者はどうなるのか。

上でも例に書いた「〇〇フラワースクール」と「△△フラワー教室」があるとして、たとえば、〇〇フラワースクールが倒産してしまったとしましょう。
そうすると、△△フラワー教室を含む、全国各地の所属教室の先生方は、もう免状を出せなくなってしまいます。
個人教室を運営している一人ひとりの先生は、花の技術を持ってさえいれば、技術を誰かに教えることは自体は可能です。しかし、「資格が欲しい」と思っている人が、新たに入ってくることは無くなります。「つぶれたスクールの教室」を、選んで入ってくる人がいるとは思えません。

このように、
「資格を出せなくなった」
「資格取得にかかわる業務で料金を取れなくなった」
という意味では、〇〇フラワースクールの免状は、母体の倒産によって紙切れになったと言えます。
しかし、花の技術を取得した証明書という意味では、全くの無意味とも言えません。母体スクールがつぶれても、少しも困らない人の例を、次の項で書いてみます。

母体スクールが無くなっても、何も困らない人もいる

自分が所属する母体スクールの消滅など、全く問題ない、または関係ない、という人は少なくありません。
たとえば、下のような場合です。

  • もう花はやめてしまい、興味もなくなっている
  • 指導資格を提示して取った花装飾の仕事があるが、すでに自分の腕で信用を確立したので、母体スクール消滅で仕事を失うようなことは無い
  • 嫁入り道具にするために花の資格を取ったが、すでに結婚したので目的は果たした
  • そもそも資格に対する思い入れが薄く、花を生けられればそれでいい

上記のような人たちなら、母体スクールの消滅は、それほど痛手ではないはずです。免状取得にかかった金額を思い返したら、残念であることは確かですが、上記の人たちには「実害」がありません。なぜなら、習得した技術に傷はつかないからです。

世の中の、花の資格を取る皆さんは、全員が「教えたい」と思っているわけではありません。むしろ、教える資格を持っている方の中で、実際に教える人は少ないのです。
では、なぜ多くの人が、指導資格を取るのかと言えば、「自分の努力と、習得した技術」を、自分だけでなく他人にも明らかに証明できる何かがが欲しいという思いが、おそらく一番強いのではないでしょうか。

その人がかつて「努力と技術を証明された」という事実は、母体スクールが無くなっても、否定はされません。形ある「紙」と、その人の「腕」に、立派な技術習得の証が残っていれば、努力した時間と注がれた情熱を、誰にも否定はされません。
そう思えば、母体スクールがどうなろうが、免状は紙切れではありません。少なくとも他人が、「その免状は無です。紙切れです」とは言えないはずです。
「楽しみ」の部分も、同様です。母体スクールが無くなったら、花を飾るのが楽しくなくなるなんて、有り得ないことです。技術も楽しみも、誰にも奪われはしません。

本当に優秀な資格は、たとえ発行母体が無くなっても一目置かれる

上の項に書いたように、技術と「花の楽しみ」そのものは、一度手にしたら奪われたりしないものです。そして、真に優れた技術の証明になる免状であれば、母体スクールが無くなっても、人から一目置かれることに変わりないと思われます。(断定せずに「思われる」と書くのは、かつて消滅した有力資格が無いからです)

「持っている技術に一目置かれる」ということを主にして考えると、民間資格よりも、国家資格であるフラワー装飾技能士を例にした方が分かりやすいかもしれません。
たとえば、こういうことです。

フラワー装飾一級技能士の人がいたとします。
ところが、厚生労働省が認める「技能士」の種類の見直しをして、フラワー装飾技能士を次年度から廃止、と決定し、事実上「技能士資格無効」を宣言したとします。(実際にそんなことは考えにくいので、受験を考えている方はご安心を)
国が宣言して廃止されたとしても、その人がかつて一級技能士を取った事実は変わりません。一級技能士は、熟練の技術が無いと取れない資格なので、制度廃止であろうが無効になろうが、その人は「立派な技術のある人」です。
制度廃止後に、その人に資格の有無を問えば、「フラワー装飾一級技能士でした」と言うでしょうが、そのインパクトは、「フラワー装飾一級技能士です」と言うのとなんら変わりません。自分の経歴に書く価値は、制度が廃止されても、まったく傷がつかないでしょう。

免状持ちには、「編入」が許されることがある

フラワーアレンジメントやプリザーブドフラワーの世界には、「他スクールから編入できる」制度を導入しているところがあります(いけばなの世界にはありません)
つまり、Aプリザスクールで指導者資格を持っていた人が、Bプリザスクールに入ってきた場合、本来は必須である初心者コースを飛ばして、「講師コース」などに編入できる、という制度です。
初心者が勉強する花材の下処理、素材の扱いなどの「基本的作業」が、どのスクールでもほぼ変わりがないジャンルでは、このような制度が成り立ちます。

編入するにあたっては、Aスクールの指導者資格を証明するもの(免状や講師証など)をBスクールに提示し、手続きすることになります。
もしも、自分の通っていたAスクールが無くなってしまったとしても、編入を認めているBスクールに証明書類を提出すれば、受け入れてもらえます。
編入が歓迎されない可能性としては、Aスクールが、なにか業界的にブラックな存在になっていたとか、業界の横のつながりが全くなく細々とやっていたところだったとか、要するに、Bスクールが安心して受け入れられる材料が絶望的に欠如している場合には起こり得ることも考えられます。

こういうことを考えると、「信用ある大手スクールに通う」というのは、それなりに意味のあることと言えるのかもしれません。

母体スクールが消滅した資格は、履歴書に書いてもいいの?

花の資格を履歴書に書く場合、すでに母体スクールが消滅した資格を書いても良いのかということになりますと、これは、各人の見識に任せられることになります。

しかし、「その見識の考えようがわからないんだ」という方もいらっしゃると思いますので、管理人ならどうするかという、管理人個人の考えを書かせていただきます。
私なら、そのときの書類の提出先を考え、書いたほうが有利だと思ったら、書きます。ただし、「以前に存在した資格で、今は無い」ということが分かるように書くと思います。

私なら、花業界の人が、大体みんな知っているような資格なら、書いて損は無い、と考えると思います。
資格の知名度が低かったり、容易に取れるタイプの資格で、書いてもそれほど得が無いと思えるようであれば、書くのはやめます。でも、何としても空欄を作りたくない書類で、その資格を書かないと空欄ができてしまう、という状況であれば、書くかもしれません。
このくらい、ケースバイケースの考え方で良いと思います。

視点を変えて、履歴書を受け取る側がどう思うかを想像しますと、「以前にあった資格だ」と分かっても、それをマイナス要素と捕えること無いだろうと思います。たとえ、プラス要素ととらえられなくても、「書く価値の無い情報で、空欄と同等だ」と思われるだけで、「もう無い資格を書くなんて、非常識な人だ」ということにはならないはずです。

花の資格は、営業に使うときであっても、役所への届出が義務付けられるようなものではありません。花の免状は、かなりファジーな書類なのです。せっかくお金を払って取得したなら、どこまでも自分の有利なように活用しましょう。


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