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生物分類技能検定

生物分類技能検定

生物に関心をもつ方々を対象にした、生物分類の検定試験です。下級の試験では、植物のみではなく、動物の分類も含みます。

生物分類技能検定(財団法人自然環境研究センター)とは

生物分類技能検定とは、1999年から行われている、財団法人自然環境研究センターの認定する民間資格です。生物に関心をもつ人を対象に、分類の知識向上と、野生生物や自然環境の調査・保全を担う人材の育成、動物分類学や植物分類学の発展に寄与する目的で作られました。

この検定は、4級から1級まであり、大きく分けると、3・4級が趣味レベル、1・2級が専門家レベルです。仕事のために取るのであれば、少なくとも2級が欲しいところです。
また、生物分類の総合的な試験であるため、植物だけでなく、動物の分類の問題が出ます。動物関連は全く興味が無い、勉強してみようという気持ちも無い、ということであれば、この資格を目指すことはお勧めしません。

生物分類技能検定をビジネス利用できる機会は、緩やかに増えてきていると言えます。自然環境コンサルティング業務・環境アセスメント業務では、あると役に立つ資格です(いまだに「取ると圧倒的に有利」とも言えませんが)。1級・2級に合格し、登録者となると環境省の「一般競争(指名競争)参加資格申請」の有資格者として認められるため、取得を推奨する会社や、取得者に手当てが出る会社もあります。
未だマイナーな資格ではありますが、少しずつ認知度も受験者数も上がってきています。

生物分類技能検定の概要

いずれの級も、年1~2回の試験が実施され(コロナ禍後、回数が安定していません)、合格者には認定証が発行されます。
公式のレベル設定としては、4級=ビギナー 3級=準プロ 2級=プロ 1級=プロ上級 です。
現実的なことを言うと、「3級=準プロ」というのは、世間的には通用しません。これは、「プロではない」という意味の準プロと理解し、プロに準ずる実力があるとは考えない方が良いです。上の項にも書いているように、3級までは趣味の領域であり、名刺に書く価値があるのも2級以上からです。
各級の試験概要は、以下の項をご覧ください。

生物分類技能検定 4級

受験資格

受験資格は、無し。無しなので、小学生で受ける子もいます。
生物が好きな一般を対象としており、受験者は学生が多いです。もともと生物に興味があって詳しければ、対策無しでも合格できる可能性もあります。

試験日

年一回。8~9月頃(年によって異なる。公式サイトで要確認)に、一定期間の中で希望日を予約できる。
同じ級は、同一年度に一回のみ受験可能。

申し込み方法

申し込みは、専用サイトから登録して申し込みを行います。郵送等での受付は行われていません。

受験料・払い込み方法

受験料は3,000円。
受験申込時に選んだ払い込み方法で支払います。

受験方法

全国250カ所以上のテストセンターで、CBT試験で行われます。全都道府県で受験可能です。
試験時間は、120分。

合格通知・合格率・合格点・その他

  • 合否は、11月上旬頃に、web上(受験申し込み時に作成したマイページにて)で発表される。郵送の合否通知は無いが、合格者には11月末頃に認定証が発送される
  • 合格点……100点中60点
  • 合格率……60%くらい
  • 合格者の平均年齢……22年度 21.8歳
  • 一度取れば、いつまでも有効
  • ビジネス上では、取得のメリットはほぼ無し。名刺にも書きにくい

生物分類技能検定 3級

受験資格

4級と同様、受験資格は無しです。誰でも受験することができます。
受験者は学生が多く、生物が好きな一般を対象としています。

試験日

年一回。8~9月頃(年によって異なる。公式サイトで要確認)に、一定期間の中で希望日を予約できる。
同じ級は、同一年度に一回のみ受験可能。

申し込み方法

申し込みは、専用サイトから登録して申し込みを行います。郵送等での受付は行われていません。

受験料・払い込み方法

受験料は5,000円。
受験申込時に選んだ払い込み方法で支払います。

受験方法

全国250カ所以上のテストセンターで、CBT試験で行われます。全都道府県で受験可能です。
試験時間は、120分。

合格通知・合格率・合格点・その他

  • 合否は、11月上旬頃に、web上(受験申し込み時に作成したマイページにて)で発表される。郵送の合否通知は無いが、合格者には11月末頃に認定証が発送される
  • 合格点……100点中60点
  • 合格率……50%くらい
  • 合格者の平均年齢……22年度 25.3歳
  • 一度取れば、いつまでも有効
  • ビジネス上では、取得のメリットはほぼ無し。名刺にも書きにくい

生物分類技能検定 2級

2級からは、資格が「動物」「植物」「水圏生物」の3部門に分かれます。ここでは、植物部門のみ取り上げます。2級は、各部門をそれぞれ受験するようになっており、一年に一部門しか受けられません。

2級から上は、専門家を対象とした資格となります。ビジネス利用するなら、最低でも2級からです。しかし、プロの仕事に役立てようと思うなら、2級は通過点と考え、最終的には1級取得を狙うのが良いでしょう。(1級を目指す人は、受験資格に「2級取得者」であることが含まれますので、2級の受験は必須です)

2級の受験者は、環境アセスメント調査,生物調査,およびそれに付帯する業務などに携わる人か,今後携わろうとする人が主で、半数以上が自然環境系コンサルタント勤務者です。

2級取得者は、林野庁(森林保護や林業の共有を確保する行政機関)や地方自治体などの一般競争入札や、指名入札の参加資格になっている場合もあります。

2級から、任意で財団法人自然環境研究センターに登録が可能です。(後述します

受験資格

3・4級と同様、受験資格は無しです。誰でも受験することができます。
資格無しで受けられる検定としては、かなり難しい試験と言えます。
ルール上、小・中学生でも受験することは可能ですが、全く現実的ではありません。3級が受かっていたとしても、2級から上は別物と思って受験するかどうかを決めましょう。

試験日

年一回。10月頃(年によって異なる。公式サイトで要確認)。
同じ級は、同一年度に一回のみ受験可能。

申し込み方法

申し込みは、専用サイトから登録して申し込みを行います。郵送等での受付は行われていません。

受験料・払い込み方法

受験料は12,000円。
受験申込時に選んだ払い込み方法で支払います。

受験方法

全国250カ所以上のテストセンターで、CBT試験(択一問題とキーボード入力による記述式)で行われます。全都道府県で受験可能です。
試験時間は、120分。

試験内容

  • 共通問題(各部門共通)・・・生物学の基礎、分類の基本、野生生物に関する広範な知識、関連法規などに関する問題が中心(受験する部門の対象生物群にかかわらず生物全般が対象となる)
  • 植物部門の専門問題・・・維管束植物のほか、菌類、藻類、コケ類などの分類に関する広範な知識を問う問題が中心。生態、形態、分布、標本作製などに関する問題を含む

合格率・合格点・その他

  • 合否は、12月下旬頃に、web上(受験申し込み時に作成したマイページにて)で発表される
  • 合格点……65~70点
  • 合格率…10%
  • 合格者の平均年齢……30歳
  • 公式の対策講習会あり
  • 一度取れば、いつまでも有効
  • 任意で登録が可能(後述します)
  • 2級より上は名刺に書く価値ありだが……できれば、名刺には「1級」と書きたい

生物分類技能検定 1級

生物分類技能検定で唯一の、受験資格有りの級です。明確にプロフェッショナル向けであり、ハイレベルな試験になります。
受験者の多くが自然環境系コンサルタントに勤務している人です。

ビジネスに役立てるために取るのであれば、ぜひとも1級を目指しましょう。

1級の試験は、一次試験と二次試験があり、一次試験通過者のみ、二次試験に進めます。

受験資格

3年以上の業務経験と、2級の同部門に合格していることが必要。

業務経験とは、環境アセスメント、各種生物調査・研究、生物関連科目に関する教育、自然解説等の業務。大学院博士課程、修士課程、専門職学位課程における生物学に関する研究経歴は、2年間を限度に業務経歴として算入することができます。
業務経験は無くても、関連した活動の経験がある場合には、活動経歴として受験申込書に記入して 業務経験3年以上に相当すると認められれば受験資格有りとされます。

試験日

年一回。一次試験は9月末~10月頃、二次試験は1月末頃(年によって異なる。公式サイトで要確認)。

申し込み方法・書類審査

1級は、郵送の申し込みのみです。公式サイトより受験申込書を入手し、記載の上、郵送します。
申し込み受け付けは、年により異なるので、正しくは公式サイトで確認しましょう(例年、4月上旬~5月末頃です)。

申し込み書類の郵送とともに、受験手数料を払い込み、受験の可・不可の審査結果を待ちます。
審査の結果は、7月頃にメールで通知されます。不可の場合でも通知が来るので、期日までに通知が無ければ問い合わせましょう。

受験可能の通知が届いたら、通知メールに記載のurlから、説明文に沿って、新規受験者登録をしておきます。

受験料・払い込み方法

受験料は19,000円。方法は、郵便局の払い込みのみです。

受験方法

  • 一次試験……全国250カ所以上のテストセンターで受験可能。CBT試験で、論文試験:経験問題と専門問題がある。試験時間は150分
  • 二次試験…東京・大阪会場のいずれかで受験可能。複数の試験管による口頭試験。試験時間は20分

試験内容

出題範囲は、2級試験に準じます。

合格通知・合格率・合格点・その他

  • 合格通知は、2月末頃に発送される
  • 合格点……経験問題 30点満点で18点 / 専門問題 70点満点で42点 (※経験問題、専門問題のいずれも合格基準点に達すること)
  • 合格率…35%
  • 合格者の平均年齢……歳
  • 一度取れば、いつまでも有効
  • 任意で登録が可能(後述します

 

受験対策・勉強法

「過去問集で学習する」ことは、とにかく大事

受ける級にかかわらず、過去問集を入手して勉強することは大切です。特に、初めての受験の場合、過去問集無しでは、どんな体裁の問題が出るのかさえ分かりません。生物分類技能検定は試験範囲があまりにも広いうえに、問題の作り方も豊富にあるので、どんな問題が出されるのか予想が立てられないのです。
過去問集は、必ず入手しましょう。

入手した過去問を、本番の試験と同じ時間設定で解いてみるのもお勧めです。試験時間は、十分な余裕があり、時間が足りなくなる人はあまりいないと思われますが、一度は本番の時間設定を体感してみると良いです。

生物分類技能検定 3・4級の受験対策・勉強法

公式の問題集を何度も解き、かならず合格点を取れるようにしておくこと。理想は、満点を取れるようにしておくことです。公式の解説集も、何度も読みましょう。これが、基本の勉強方法です。
公式のテキスト・解説集は、「絶対に合格したい」意思があるなら、必ず入手するべきです。受験時の最新版だけでなく、可能な限りの過去問をさかのぼって集められると尚良いです。公式テキストには、4年分の過去問が載っています。
公式サイトにも、いくつかの例題があるので、必ずそれもチェックしましょう。

生物分類技能検定 2級の受験対策・勉強法

受験対策できる公式書籍は過去問集のみです。これを、完璧に答えられるようになるまで、繰り返し学習しましょう。当然ですが、答えを暗記するという意味ではなく、「当然答えられるまでの知識を、図鑑などでで調べて自分のものとする」という意味です。
過去問集は、可能な限り多く集めましょう。公式サイトにも、いくつかの例題があるので、必ずそれもチェックしましょう。

もし、3級や4級の問題も危ういと思うなら(そう思う時点でかなり合格は厳しいと思うべき)、3・4級の過去問集、解説集もみっちり復習しましょう。2級からは、国家試験に準ずる試験だと認識した方が良いです。かなりがむしゃらに知識を付けて臨まなければならないと考えてください。

生物分類技能検定 1級の受験対策・勉強法

1級の受験には、公式テキストがありません。公式がすすめている参考図書はあるので、そちらを可能な限り読んでおきましょう。

1級も、基本的には、上の「2級」と同じ勉強法になりますが、2級よりもさらに多くの知識を蓄え、歩く植物図鑑レベルを目指してください。

また、1級試験には論文があります。論文対策として、事前に一度は想定した主題で、時間を計って、実際に論文を書いてみましょう。特に、普段は文章を書く機会が全くない人は本気のリハーサルを、何回かしておくと良いです。
また、いくつか、自分の書けるテーマを考えておくと、本番で役立てることができるでしょう。

二次試験に進むと、口頭試験があります。問題を想定して、どんな答え方をするのかを、シミュレーションしておくと良いです。
突然に、全く詳しくないことについて意見を述べよ、という質問は、おそらくはあまり無いです(絶対に無いとは言えませんが)。どうやら、受験者の経歴や、論文試験の内容を見て、その人がどんな経験を積んできたのか、本人の申告通りの経験であるのか、何に詳しく、どんな方向性で活動していて、環境に関してどんな考えを持っているのか、というところを確認するための面接に近いもののようです。
このような試験の場合、経歴について不正確なことを言わず、自分の考えを述べるときに相矛盾することを言わないのが重要です。逆に言うと、誠実に思っていることをまっすぐに述べれば大丈夫な試験でもあるのでしょう。

あがりやすい人は、本番で落ち着いて応えることができるように、何パターンかのシミュレーションをしておくことをお勧めします。

生物分類技能検定1・2級合格者の「登録」とは

(2023年現在の情報です)

2級、1級の合格者は任意で「登録」することができます。
登録者になると、環境省の「一般競争(指名競争)参加資格申請」の有資格者として認められます。
登録の概要は、下記のとおりです。

  • 登録手数料……5,500円(郵便局より振込)
  • 登録の有効期限……2級は無期限、1級は合格後5年間。1級の登録を継続するには更新が必要
  • 1級の登録更新……更新(更新料3,300円)ののち、5年間が登録有効になる。つまり、登録を継続するには、5年ごとに更新をしていくことになる

登録した方が良いのか、しない方が良いのかは、人によります。
登録には、料金が発生しますので、
「登録料金、更新料金を払っても、それに見合うorそれを上回るメリットがあるのかどうか」
を考えて、決めると良いでしょう。ただし、ビジネス使用したいのであれば、登録は必須と考えてください。

趣味でとって、ビジネス利用する気持ちが無い人でも、「登録者になりたい気持ちが、必要な料金を上回る」のであれば、登録した方が良いと思います。
ちなみに、2級合格者の登録率は、およそ93%、1級合格者の登録率は、およそ99%です。

参考 登録した人の肩書は?

生物分類技能検定に合格し、登録を済ませた人の肩書は、「生物分類技能検定登録者」です。プロフィールや名刺に「生物分類技能士」などと書くと、虚偽の名乗りになるので注意しましょう。(技能士が付くと、国家資格保持者と偽っているようになるので、絶対にダメです)

生物分類技能検定は、何級を取るのが良い?

何級を取るべきかは、とる人の状況や気持ちによるものなので、一概に言えるものではありません。しかし、目安としては、
趣味でとるなら、本人が取りたいところまで、
ビジネス目的で取るなら、基本的には1級を目指すべき、

と思っておくと良いでしょう。

趣味ならば、4級や3級でも良いし、時間と金額を費やしても良いのであれば、1級・2級を目指しても良いです。2級より上は、勉強量が必要になりますし、そもそもプロ用の資格なのですが、それを楽しむ気持ちがあるなら、趣味で挑戦して悪いことなどありません。(趣味で取ったら大したものです。自慢できます)

ビジネス目的であれば、やはり「1級取得者」と名乗りたいところです。しかし、自分の仕事には2級で十分だと思えば、2級で止めるのもその人の見識です
登録をしようとする人の最大の理由は、環境省(その他の省庁や自治体も)の入札資格を得られることかと思います。実際に入札公告など見れば分かりますが、入札資格は「2級以上」となっているものも多いのです。

1級か2級かで悩むのであれば、上の項の「登録」についても考えましょう。上の項を読んでいただくとわかるのですが、1級を取って登録すると、定期的に更新料が発生します。2級であれば、更新料は要らないのです。長期的に考えて、「1級で登録を継続するより、2級で登録する方が良い」と思えるのであれば、とりあえず2級までで止めておいて、「やはり1級が必要だ」ということになってから1級を受験しても良いでしょう。

生物分類技能検定が役立つ仕事は?

直接的に役立てやすいのは、生物調査員、環境調査員などの、自然環境コンサルティング業務・環境アセスメント業務です。

就職先としては、環境コンサルタント会社・測量会社・自然教育施設などが考えられます。

業務として、生物分類技能検定が大きな効力を持つのは、環境省の「一般競争(指名競争)参加資格申請」の有資格者となれることです。つまり、環境省の入札に参加できるのです。
実例を挙げますと、下のようなものがあります。

  • 北の丸公園樹木調査業務
  • 再生可能エネルギー資源発掘・創生のための情報システム整備に向けた植生調査植生図作成委託業務
  • 日高山脈国立公園指定に関する指定植物選定業務
  • 皇居外苑濠特定外来生物駆除業務

環境省以外の省庁や自治体も、「生物分類技能検定〇級以上の資格者」を入札資格要件とすることが多々あります。

下は、実例です。

  • 千葉市 都川の水生生物調査業務委託
  • 横浜市 根岸住宅地区自然環境調査業務委託

様々な入札で求められている生物分類技能検定の資格のうち、植物部門の占める割合は大きいです。動物部門と、ほぼ肩を並べている現状ですが、厳密にカウントすれば、動物部門にかかわる入札の方が、やや多いかもしれません。


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