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ビオトープ管理士

ビオトープ管理士

ビオトープ管理士とは、地域の生態系を守ることができる技術者です。

※小さな鉢や池の中で人工的に生態系をつくることも「ビオトープ」と称しますが、それを作る技術者という意味ではありません。もっと大きな自然の生態系の保全や再生を担うのがビオトープ管理士です

ビオトープ管理士(日本生態系協会)

ビオトープ管理士は、平成9年度に設立された、公益財団法人日本生態系協会が認定する民間資格です。

ビオトープ管理士には「ビオトープ計画管理士」と「ビオトープ施工管理士」があり、それぞれに1級と2級があります。

上にも書きましたが、現在の日本で「ビオトープ」と言えば、一般的には、池や水槽などの中に人工的に水辺の生態系を再現したものを指します。この箱庭的な人工生態系は、学校などで作られることも多いため、知識として浸透していて、これを作る技術のある人がビオトープ管理士だと勘違いされやすいのですが、ビオトープ管理士の実体はそうではありません。
ビオトープ管理士とは、地域の生態系を保ちながら、工事や都市化などを行うため、自然の保全や再生を担うことのできる技術者です。環境保全に関する専門知識を持ち、提案・指導などの活動をすることができます。

ビオトープ管理士は、ビジネスの資格? 趣味の資格?

ビオトープ管理士2級は、受験資格が特になく、誰でも受けられるので、ビジネス目的で取得する人も、趣味で取得する人もいます。学生の受験者も多いです。

1級になると、業務経験が必要になるので、ビジネス目的で取る人が多くなりますが、ボランティアで自然保護活動をしている人や、全くの趣味や興味で取る人もいます。公式の情報によれば、受験者の年齢層は、30代~50代が9割とのことです。

現実的に、ビジネス使用できる資格かというと、この資格が無いと勤まらない仕事というものは、現状ではありません。あれば役に立つこともある、という程度の資格になります。
ビオトープ管理士の受験者の業種は、公式発表で、環境コンサル業、土木・建設・建築業、造園業がトップ3で、そのほかは製造業、材料メーカー、公務員なども多いとされます。このような職の人が、サブ的に持っている資格、と言えるでしょう。
具体的な業務で言うと、庭造り、地域環境を考慮した建設、環境調査、自然環境教育、などの仕事が資格の内容に直結します。

会社によっては、取得を推奨しているところもあります。理由は、環境省や国土交通省、農林水産省などの中央省庁、各地の地方自治体で、業務入札条件や技術者の評価基準として採用されているからです。また、昨今推進されているSDGsの17項目のうち、4項目にかかわりがあることから、今後は注目される資格になる可能性も含んでいます。
一度取ってしまえば、更新の必要がないので、受験のための準備の時間と受験料が惜しくないなら、持っていて損はない資格です。

どのビオトープ管理士試験を受けるのか

ビオトープ管理士には、2系統2階級の試験があるので、計4つの試験・資格があります。
つまり、①ビオトープ計画管理士1級 ②ビオトープ計画管理士2級 ③ビオトープ施工管理士1級 ④ビオトープ施工管理士2級 です。

上記の4つの資格の、どの試験を受けるのも、受験者の自由です(1級は受験資格があるので、誰でも自由には受けられませんが)。
計画管理士も施工管理士も両方欲しい場合、どちらかを先に受け、もう一つは次年度以降に取ることができ、どちらを先にと言う決まりはありません。(試験日がすべて同日なので、「同年に複数の試験を受験」はできません)

また、2級を受けずに1級のみ受けることは可能です。ビジネスなど、かなり専門性を持ってビオトープ管理士の資格を活用したい場合、誰でも受けられる2級は特に必要ないこともあるでしょう。そのときには、1級のみ受験すれば時間と受験料の節約になります。

計画管理士と、施工管理士のどちらを取れば良いのかは(あるいは、どちらを先に取るのかは)、本人の興味やスキル、将来的な展望などを考えて決めましょう。
簡単に言うと、

ビオトープ計画管理士は、都市計画、農村計画などの広域的な地域計画のプランナーへ向けた資格
ビオトープ施工管理士は、設計・施工にあたる事業現場担当の技術者へ向けた資格

です。また、級の違いは、公式サイトによれば、

1級は、経験豊富な事業の責任者レベル
2級は、基礎的な知識のある技術者のレベル

とされています。もし、自分のビジネスのため、キャリアアップのためと思って取るなら、2級ではあまり目的にかなわないかと思います。取るなら1級を狙うことをお勧めします。

ビオトープ管理士試験の概要

(2022年現在)

  • 受験申込期間……例年6~9月くらい ※公式情報(公式サイトの「受験の手引き」)で確認を
  • 受験票発送……例年9~10月くらい ※公式情報で確認を
  • 筆記試験日……例年9月~11月くらい ※公式情報で確認を
  • 1級筆記試験合否発表……例年11月~12月くらい ※公式情報で確認を
  • 口述試験……例年12月~1月くらい ※公式情報で確認を
  • 1・2級合否発表……例年12~2月くらい ※公式情報で確認を ※合格通知が届いたら協会に住民票を送ります。住民票を確認したのちに認証書が発行されます
  • 認証書の送付……2月頃合格者に送られる
  • 受験手数料……1級 11,300円、2級 7,200円
  • 合格率……(毎年公式発表アリ)1級=例年およそ30%前後、2級=例年およそ50%前後
  • 受験会場……北海道、岩手県、宮城県、新潟県、東京都、長野県、石川県、愛知県、大阪府、徳島県、広島県、福岡県、鹿児島県、沖縄県etc ※詳細は秋ごろ、受験票か公式サイトで確認できる

受験の申し込みには、「受験の手引き」を入手する必要があります。上に、「公式情報で確認を」と書いたものは、すべて「受験の手引き」で確認できます。受験の手引きは、公式サイトから印刷することも、協会に請求して送ってもらうこともできます。

受験資格

※2級には受験資格が有りませんので、下に挙げるのはすべて1級の受験資格です

受験資格として、下記の条件のうちいずれか1つを満たしていることが必要です。(計画管理士・施工管理士ともに)

  • 四年制大学を卒業後、通算で満7年以上の実務の経験年数を有する者
  • 大学院(土木、造園、農業、生物関係に限る)を卒業後、5年以上の実務経験を有する者
  • 短期大学、専門学校、高等専門学校のいずれかを卒業後、通算で満9年以上の実務の経験年数を有する者
  • 高等学校を卒業後、または高等学校卒業認定試験(旧 大学入学資格検定/大検)合格後、通算で満11年以上の実務の経験年数を有する者
  • 技術士(建設、農業、森林、水産、環境 の5部門に限る)、1級土木施工管理技士、1級造園施工管理技士、のいずれかの資格を取得後、通算で満4年以上の実務の経験年数を有する者
  • 2級ビオトープ計画管理士、2級ビオトープ施工管理士、2級土木施工管理技士、2級造園施工管理技士のいずれかの資格を取得後、通算で満7年以上の実務の経験年数を有する者
  • 上の学歴・資格によらない場合で、通算で満14年以上の実務の経験年数を有する者

上のリストで言う「実務」の内容とは、受験する部門によらず、以下のものとなります。

  • 地域計画の事業(都市計画や農村計画など)における、基本構想の策定、計画、設計、研究、分析、評価の実務、およびそれらに関する指導・監督
  • 土木工事や造園工事の、現場設計、施工、研究、分析、評価の実務、およびそれらに関する指導・監督
  • 野生生物の調査や環境改善など、自然環境の保護・保全、復元、創出に関する活動
  • 上に関する、教育機関での継続的な指導
  • 上に関する、環境NGOにおける継続的な活動

試験内容

2級ビオトープ管理士

【共通問題】……計画管理士・施工管理士の両試験に共通する問題

  • 選択問題・小論文(試験時間2時間半)
    生態学10問……①生態系の構成要素 ②機能 ③生物と環境の間の相互作用等に関する事項
    ビオトープ論10問……①ビオトープの理念 ②保護の考え方及び方法等に関する事項
    環境関連法10問……自然環境及び野生生物の保護等に関する法制度(主に、下の各専門科目の範囲外の問題) 専門科目(計画部門受験者)20問……①都市計画や農村計画 ②地域計画 ③国土全体の土地利用計画等において、特に自然生態系の保護・保全・復元・創出を目的とした場合の抗争・計画・設計等に関連する事項とそれらに関する法制度
    専門科目(施工部門受験者)20問……河川や士水域・海岸・道路・農地・公園・里山・森林・庭等において、野生生物の生息空間を保護・保全・復元・創出する際の設計・施工全般に関する事項とそれらに関する法制度
  • 小論文……400字以内 複数のテーマの中から一つを選択する

1級ビオトープ管理士

  • 選択問題50問(試験時間2時間半)
    生態学10問……①生態系の構成要素 ②機能 ③生物と環境の間の相互作用等に関する事項
    ビオトープ論10問……①ビオトープの理念 ②保護の考え方及び方法等に関する事項
    環境関連法10問……自然環境及び野生生物の保護等に関する法制度(主に、下の各専門科目の範囲外の問題)
    専門科目(計画部門受験者)20問……①都市計画や農村計画 ②地域計画 ③国土全体の土地利用計画等において、特に自然生態系の保護・保全・復元・創出を目的とした場合の抗争・計画・設計等に関連する事項とそれらに関する法制度
    専門科目(施工部門受験者)20問……①河川や士水域・海岸・道路・農地・公園・里山・森林・庭等において、野生生物の生息空間を保護・保全・復元・創出する際の設計・施工全般に関する事項とそれらに関する法制度
  • 記述・小論文(試験時間2時間半)
    記述問題4問……部門別の発展的な内容。各問いに400字以内で解答する
    小論文1問……800字以内 複数のテーマの中から一つを選択する

↑上の筆記試験に合格すると、後日口述試験を受けることになります。口述試験とは、いわゆる面接形式で、質問されることに一つ一つ回答していきます。一人あたり約15分ほどの時間で行われます。
記述試験で合格したのに口述試験で落とされた、という人は少なくないので、たった15分の面接ですが、事前準備はしっかりした方が良いです。口述試験の結果によっては、追加で課題の提出を求められることもあります。

試験中の注意事項

下記は、試験中に注意しておくべきことです。

  • 2級試験と、1級の選択問題は、かなり時間がたっぷりある。時間が余ったら慎重に見直しし、つまらないケアレスミスでの取りこぼしを防ごう
  • 記述問題……4問全てにおいて合格点であるA・B評価であること(A~Dの4段階評価)
  • 小論文……意志・信念・知識の内容が適切であること

ビオトープ管理士試験の合格基準

ビオトープ管理士試験の合格基準は、公式情報が明らかにされています。

  • 選択問題……各科目の正答が60%以上
  • 試験は、開始一時間を過ぎると退席可となるが、問題用紙を持って出ることはできない(試験終了まで席にいれば、問題用紙を持ち帰れます)
  • 小論文……意志・信念・知識の内容が適切であること

ビオトープ管理士試験の受験対策

試験科目のジャンルが広い!

ビオトープ管理士試験は、出題の範囲が広いことが特徴です。生物や、設計関連、法律関係などの知識ばかりか、最新の自然環境保護活動の動向の把握まで必要になります。
おそらく、試験科目すべてを専門的に勉強していて(もしくは業務でかかわっていて)得意だ、とする人は少ないでしょう。生物の知識は素人並み、とか、法律には全く触れたことが無い、など、自分の知識に大きな穴があると自覚する人は、早めに受験勉強に着手することをお勧めします。

基本は、「過去問を解く」

必ず過去問を入手して、解いてみましょう。できるだけ多くの過去問を入手できると良いです。数年分の過去問を見て、出題傾向を把握しておくことも大事です。

過去問を入手するには、下のような方法があります。

  • 公式サイトからのダウンロード……公式サイトから、エコネットに会員登録(無料)すると、3年分の過去問がダウンロードできる。もし、いずれ受けると分かっているなら、数年前からエコネットに入会してダウンロードしておくと、3年分よりも多くの過去問を入手できる
  • ビオトープ管理士セミナーに出る……ビオトープ管理士セミナーで配られる副読本に過去問5年分が載っている
  • ビオトープ管理士セミナー副読本を購入する……上記のセミナーには出ず、副読本のみ購入することができる。公式サイトから入手した注文書を、faxか郵送することで注文できる
  • 公式テキストを購入する……唯一の受験対策用公式テキスト。1年分の過去問が載っている (2級用)ビオトープ管理士資格試験 公式テキスト
  • 過去に受験した人に問題を見せてもらう……身近にビオトープ管理士の受験経験がある人がいたら、問題用紙を持っていないか聞いてみましょう

法改正に注意!

法律の改正は、たびたび行われるものです。ビオトープ管理士試験のために必要な法律知識は範囲が広いので、重要な法改正を見逃さないようにしましょう。(法改正により、過去問の答えが間違っていることもあるので注意!)

【参考】公式サイトにある、公式テキストアップデート情報には、法改正によるものも含まれます。しかし、すべての法改正情報がアップされているとは限りません。最新の法律を確認するのは受験者本人が独自にするべきことと思いましょう。

ビオトープ管理士セミナーを受講する

ビオトープ管理士試験対策に特化した講座なので、受験対策としては役に立ちます。
以前は、東京と大阪の二会場で開講していましたが、コロナ禍により、現在はオンライン講座になりました。
可能であれば受けた方が良いですし、必ず合格する必要がある人は是非受けた方が良いです。オンライン講座は、配信期間中は何度でも視聴可能です。

ビオトープ関連の最新情報をマメにチェックしておく

ビオトープにまつわることで、どんな動向があるのか、「ビオトープの今」を知っておきましょう。
自然の保全・再生関連の最新情報を意識的にチェックしておき、「世界的には、こんな意識が主流なんだな」「こんな新しい提案が有るんだな」というようなことを、頭の隅に置いておけるようになると良いです。これは、本当に好きでビオトープ管理士になろうとしている人なら、それほど難しいことではありません。習慣的に、ときおりネットで情報収集するだけでもできることです。

そうやって蓄えた最新情報の中から、実際に試験問題に出るものは数少ないかもしれませんが、記述問題を書くときに切り口のヒントになることもありますし、面接の答えの中に自然に入ってくるようになると意識の高さのアピールになります。

受験経験者に聞いてみる

身近に合格者がいたら、ぜひ話を聞いてみましょう。たとえその人が不合格であったとしても、聞いてみる価値はあります。
その人の勉強法、使用した教材、勉強した期間、どんな問題が出たのか、試験会場の空気感、試験の時間配分、特に注意するべきと思うことetc、すべて貴重な情報です。
ただし、聞いたことを鵜呑みにせず、それをもとに自分で考えて受験対策することが大事です。専門分野や知識量が違う相手から聞いたことが、そのまま自分にも当てはまると、安易に思い込まない方が良いです。

また、ビオトープ管理士のようなマイナーな資格は、「受験者の間に代々伝えられている有力な情報」が存在することがあります。実際の経験者に聞いてみると、いくらネットで探してもたどり着けない良い勉強法を手軽に入手できることもあります。聞ける相手がいるのであれば(いない人の方が多いのです)、「人に聞いてみる」ことを実践しないのはもったいないです。

ビオトープ管理士は、就職に有利なのか?

ビオトープ管理士は、ビジネスの資格? 趣味の資格?の項にも書きましたが、現状では、この資格が無いと勤まらない仕事はありません。つまり、ビオトープ管理士の資格を持っていることを理由に、就職が圧倒的に有利になることはありません。特に、2級は誰でも受けられる試験ですので、これをビジネスの場で役立てることは難しいです。関連業種への就活の際にも、目を引く資格にすらならない可能性が高いです。
新卒の場合、ビオトープ管理士を持っているとしたら必ず2級のはずですから、良くて、「興味や意欲があるんだな」「資格取得に取り組む熱意のある人物なんだな」という印象付けになるくらいでしょう。

業務経験のある人が転職する場合は、「役に立つことがあるとすれば1級」と思いましょう。2級では、いかにも弱いです。1級でさえ、役に立つかどうか分からないのです。もしかすると重視してくれる企業があるかもしれない、プレゼン力がある人なら面接で「良い材料」を追加することができるかもしれない、という程度と思っておきましょう。


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