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花の「プロ講座」を取れば本当にプロフェッショナルになれる?

花の「プロコース」は、本当にプロフェッショナルになる面倒をみてくれるのか?

多くの花のスクールには、「プロ用コース」というものがあります。フラワーアレンジメント、いけばな、プリザーブドフラワー、ハーブなど、ほとんどのジャンルのスクールに「プロコース」はあり、受講さえすれば、あなたもプロフェッショナル!といううたい文句を掲げていることが多いです。

そのようなプロコースに通い、真面目にレッスンを受けたなら、本当にプロになれるものなのでしょうか? そもそも、プロコースを設置する側は、どの程度プロフェッショナル育成に熱心なものなのでしょうか。

これからプロコースに入ろうか、と検討する方は、花の世界に夢を持ち、勉強する熱意も持っている方のはずです。そんな方のために、花のプロコースが、どの程度「プロになる力」を与えてくれるものなのか、ということに迫ってみようと思います。

花の「プロコース」にも、色々なパターンがある

花のプロコースというものは、色々あります。コースの名称は、各スクール、団体で様々です。
たとえば、

  • プロフェッショナルコース
  • スペシャリストコース
  • クリエイターコース
  • エキスパートコース

など、「ただのお稽古事よりも、もっと本格的な講座なのだな」と、素人の目にも分かるようになっているものです。

しかし、このような名称だけ見ても、「どの程度本格的なのか」「具体的には、何を得られる勉強なのか」ということは、わかりにくいものです。これは素人ばかりか、コース名だけでは、花のジャンルをある程度知っている人にも見極めが難しいです。

花のプロコースは、「同じくらい本格的に見えるコース名」であっても、それぞれ本格の度合いが異なるものなのです。
大きくパターンに分けると、下記の3つくらいなります。

【1】教えられる資格を出すシステムがあるので、プロコースと称している
【2】一般コースよりも、一段上の技術を教えるので、プロコースと称している
【3】スクールや団体の中でも、えり抜きの優秀人材を育てる「選抜メンバー向け」なので、プロコースと称している

パターン【1】……「資格が取れるコース」=「プロコース」としているレッスン

上の項の【1】は、大抵の花の教室がそれをやっているので、特別なことではないのですが、それでも「プロ=有資格者」と考えれば、「プロを生み出します」という言葉に嘘は無いので、「指導資格を出せる」というだけで「プロを養成します」と謳っている教室もあります。(実質は、「ごく普通の教室」ですが)

無資格から始め、一日でも早く自活できるプロになりたいと思っている人がこのような教室に入った場合、「実質」が分かったときにはがっかりするかもしれません。プロになるために教室が力になってくれることは、資格を出してくれることだけなのです。

しかし、花のプロフェッショナルとして活動している人の多くは、「何の変哲も無い、町の個人教室」の出身者です。どんな教室であれ、そこで腕は磨けるはずなのです。が、「プロ養成に特化した教室」にこだわって探している人には、あまり満足できないこともあるでしょう。

パターン【2】……「一般コースよりも一段質の高いレッスン」=「プロコース」としているレッスン

【2】は、「一般コース」「ベーシックコース」のようなレッスンでは、すでに物足りなくなってしまった、という方向けのコースです。なので、上の【1】のような、「ごく普通」な教室ではありません。
このタイプのレッスンは、スクールや団体が直に募集する教室にあったり、大人数を抱える有名な教室の先生とか、キャリアを積んだ生徒さんが多い教室の先生が設置してることが多いです。

このタイプのレッスンには、下記のような特徴があります。

  • 特殊花材を扱える
  • 特殊なスタイルを教えてもらえる
  • 特殊なシチュエーション(ブライダルの花飾りなど)を設定してもらえることもある
  • 特殊な現場の見学をさせてもらえることもある
  • 花材・資材・レッスン料とも、一般コースよりは高額

このようなコースのメニューは、一般コースを習っている人から見ると、「うらやましい」と思えるものばかりです。実際にコースを受けると、大変だけど楽しい、と思う人がほとんどでしょう。

楽しいのは良いことですし、習ったことは必ず糧になるはずです。しかし、この記事で問題にしている「プロになるために、どんな力になってくれるのか」ということになりますと、現実には、経験値を少し上げてくれる程度のところが多いです。プロになりたい人なら、ぜひとも経験したいようなメニューは多々含まれていても、そこから「プロになるための分かりやすい道」が開かれるわけではありません。

このタイプの講座は、プロになるためには不要だ、と言っているのではありません。実際に、このような講座をきっかけにして、プロに進んでいく人はいるのです。
そういう人は、講座をきっかけに視野が広がり、意欲も行動力も増して、プロへの道をリアルに模索し始めた人たちです。(「リアルに模索する」というところが重要です!)
このようなタイプのプロコースの使命は、「自分だって、リアルな模索ができるのだ」と、人を覚醒させることなのかもしれません。

パターン【3】……「スクールや団体の中で、選ばれた人がだけが受けられる高等教育」=「プロコース」としているレッスン

各種フラワースクールや、いけばな流派の中で、その運営本部が少人数を集めてハイレベルなレッスンを受けさせるタイプのコースがあります。このようなコースは、やる気のある生徒さんたちの応募が殺到することが多く、募集人数を大きく上回る人が集まってしまった場合、経歴や能力でふるいにかけられ、優秀な人しかとらないことも珍しくありません。
応募が殺到する理由は、コースのメニュー自体が魅力的なことはもちろんですが、
「有名な○○先生の指導が受けられる」
「有名な○○先生も、このコースの出身だ」
などの理由もあるはずで、人によってはそちらの方が主だったりします。

特に、「○○フラワースクールの本部講師のほとんどが、このタイプのコースの出身者だ」というような場合には、本部講師を目指す人は、当然このコースに応募してくるでしょう。
このタイプのコースの特徴としては

  • 講師もメニューも一目で分かるほどハイレベル
  • 良質の花材・資材を扱える
  • 特殊なスタイル、特殊なシチュエーションの花が学べる
  • 一般の教室では到底出来ない経験が複数積める
  • プロとして活動している先生でもなかなかできないような経験が複数積める
  • 受講料は、かなり高額

このようなコースは、募集要項などに明記はされていなくても、「幹部候補発掘目的」という気配が色濃いことがあり、その場合は、スクール・団体内で上に行きたい人には見逃せないものになります。
このタイプのレッスンは、スクール・団体が力を注いできますので、本気で受講し、絶対に無駄にしない決意があれば、後の花人生の大きな糧になるでしょう。

「プロになる力」としてはどうなのか、と言えば、これもやはり「受講者次第」です。
このような高いレベルのの講座であっても、「受講=プロに直結」ではありません。むしろ、このレベルだからこそ受講者次第なのです。

このような講座の最後にあるものは、プロの仕事を得るための就職相談会ではありません。
たしかに、「幹部候補選び」を目的とした講座なのであれば、スクール・団体は、受講者の中の、「有能な人」を探すでしょう。しかし、その結果選ばれるのは、恐らく2~3人程度です(何百人受講しようが、2~3人だと思います)。その2~3人に選ばれるために全力を尽くすのも、一つの道ではあります。そこを足がかりに、プロ中のプロになっていく人も実際にいるのですから。

しかし、9割以上の受講生は、受講して終わりなのです。受講して得たもので、本人が戦っていくしかないのです。真面目に受講すれば、得たものは相当大きいはずですので、スクール・団体の側は、

「とても大きな武器を持たせてあげました。その武器を使って、ガンバってください」

という言葉を、講座の最後に伝えてくるでしょう。それが、このタイプのコースの「結末」です。

スクール・団体の側に、大きな武器を授けるつもりは十分にあるので、真面目にそれを受け取り、賢く使った受講者には、
「思い返せば、あの講座のおかげで道が開けた」
という未来も大いにあり得ます。その未来を得たければ、受講した時間すべてを財産にしなくてはなりません。財産にする能力と気概がある人にだけ、この手のコースはプロへの道を開くのです。受講さえすれば、すべてがうまくいくと考えてる人には、この手のコースは道を示しはしないのです。

受講だけで満足していては、なかなかプロにはなれない

夢を持って、「あのコースを受ければ私もプロフェッショナル」と思っている方をがっかりさせてしまうかもしれませんが、「コースを受講すること=プロになること」と言い切れる、プロ製造率100パーセントなプロコースはありません
ある講座に入りさえすれば、そのままプロとしてやっていける、と思っている人がいるとすれば、相当に世間知らずの人です。

管理人の、まったくの勘で言いますと、花の教室で受講生からプロが出る率など、1割以下だと思います。花の教室にも、フラワーアレンジメント・いけばな・プリザなどいろいろありますが、どんなジャンルでも一割以下だと、私は思います。よほど高額の受講料を払い、マンツーマン指導の特殊なものでも、3割までいかないと思います。

レベルの高い講座を受けることは、無駄なことのはずは無く、有益なことが多いはずです。少なくとも、「行く前と、技術も意識的なものも、何も変わらない」ということは無いと思います。むしろ、技術の習得・経験・人との出会いで、満足を得られる方がほとんどのはずです。

しかし、そこからプロへと考えているのであれば、講座が終わって満足したときにこそ、道を開くために動き出しましょう。プロコースを学んだあなたは、もはやいくつかの武器を入手済みです。独自の戦い方が、きっと見つかります。

プロコースのレッスンだけでは、技術習得の時間は少なすぎる!

一般レベルよりも上のランクのプロ用コースに通うと、講座の主催者側は、
「あなたたちは、普通とは違うハイレベルの勉強をしているのだ」
「こんなハイレベルの勉強をしたら、滅多に得られないスキルを得ているはずだ」
「あなたの腕は、当然世間に通用する」
というようなことを言うものです。

たしかにプロコースの中には、一流の講師陣がそろっていたり、プロでもなかなか触れない素材に触れるものもあり、そのような講座では「講義レベルが非常に高い」ことに、嘘は無いのだとは思います。
しかし、それを鵜呑みにして、
「明日から、私は花のプロとしてお金をもらえるのだ」
と思うと、痛い目に合うこともあります。

せっかく高度なレッスンを受けたのだから、それを自信に変えていけないことは無いのですが、心のどこかに、クールで謙虚な自分をキープしておくことをお勧めします。
たいていの花屋から見ると、花の先生たちの知識や振る舞いは、一般の素人とあまり変わりがありません。流派やスクール内では有名な先生でも、それに当てはまる人は少なくないです。
大体が、花のプロコースというものは、ほかのジャンルの「プロになるためのスキル習得」に比べたら、時間も労力も少ないことがほとんどなのです。

ハイレベルなプロコースのレッスンの多くは、月に1~2度程度です(受講料が高額なことと無関係ではないと思います)。週一ペースで行われているものなどわずかです。
仮に週一ペースだとしても、「練習」の頻度としては、ずいぶん少ないと言うべきではないでしょうか。

世の中の、「プロになるためのスキル習得をがんばっている人」というのは、毎日練習するのが普通なのです。(ピアニストや美容師や、料理人や、プロスポーツ選手の練習の仕方を思い浮かべてみてください)
ハイレベルなプロコースを受講するのも結構ですが、毎日の地道な自主練習をしなければ、ギャラをもらえる腕になど、なかなかなれないのだと思うべきです。

プロコース卒をアピールできる場は少ない

そのジャンルの中では、びっくりされるようなハイレベル講座を出ても、世の中の人にそれが通用することは少ないです。名門の教室出身であることも、同様です。(マスコミ的有名人の先生に教わっていると、かなり感心してもらえますが)
がんばって勉強してきたことを、もっと認めてもらいたいところですが、現実はそんなものです。

花の習い事の世界には、お互いを誉めあう土壌があり、仲間内で「すごい」「素晴らしい」と言われ続けると、自分がひとかどの先生になったように錯覚することがあるものですが、そんなものは外の世界では何の力も持ちません。
ハイレベルの講座に通いました、とアピールしても、ビジネス的に有利に働くことなどほぼない、というくらいの気持ちでいる方がいいです。ただし、自身をプロデュースする能力が高い人はこの限りではありません、どんどんアピールして得点をかせぎましょう。

管理人の私見ですが、現状では、花の習い事の世界で、本当にビジネスとして通用する人材を育て上げられるプロ講座など、ほとんどないようなものだと思います。ビジネスでは許されないことが、「ハイレベルのお教室」では、大概許されているのが現状です。
それが特に顕著なのはスピードで、習い事の世界では、「早くやれ、もっと早くやれ」という訓練が抜け落ちています。

プロになったら、「手が遅い」のは、致命的な欠点になることもあります。プロコースを受ける人は、「自分が今受けているこの講座のスピードは激遅だ」くらいに思って、自分で心掛けてスピードの訓練をしておいたほうが良いです。(フラワーアレンジメントや、プリザーブドフラワーの下処理のスピードは特に早くできるように!)

まとめ……「受けただけ」では終わらせない気概を持つこと

たいていのプロコースは、お金と時間を注ぎ込めば、ほぼ誰でも受けられるし、卒業できます。
受けるだけなら、ほとんど誰でもできるのです。ならば、受けただけで終わらせてはダメです。

この講座を受けさえすれば道が拓けるという、安易な気持ちは捨て去り、自分はやっと武器を手にしたのだと思って、自分のスキルで道なき道を切り開く決意をしてください。
それが、正しいプロコースの活用法です。


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