独学で花は習えるもの?
教室に通わず、先生にもつかず、花を独学で修めることはできるのでしょうか。
花は独学で習えるものなのだろうか
色々なものを、独学でモノにしている人はたくさんいます。学びを独学ですることは、自分の気持ち一つでできて、月謝もかからないので、それでうまくいくものならそれが一番良いのかもしれません。
花の習い事も、全くの独学で勉強している人もいるはずです。
花は独学に向いているのかどうかということになると、本気でやりたい気持ちがあるのであれば、おそらく独学向きではないジャンルになるかと思います。独学で始めても、いつかその環境に飽き足らない思いが芽生えてくる可能性が非常に高いです。
しかし、花の独習用教材というものも存在しますし、趣味でやるなら、自分が「これで良い」と思う限りは独学でも支障はありません。
以下の項で、花を独学で勉強する方法を挙げてみます。
独学の方法1 書籍で花を習う
色々な花の習い事の独習用書籍が、実際にたくさん出回っています。知識系の花の学習は、本選びにそれほど失敗が無いので、ここでは技術系を学びたい人のための注意点を書いておきます。
本を買うときには、自分の求める内容が載っているのかどうか、きちんと確認してから購入することをお勧めします。一度は現物を見てから買うのが安全です。
花のハウツー本は、様々なデザインの作例を見せるだけの本や、用語のわからない人には不親切な本などがかなりあります。また、図解されているのに、初心者にはその絵がわかりにくいものもあります。要するに、最低限の下地がある人向けの本が多いのです。
「はじめての○○」「誰にでもできる」などと謳っている本でも、本当にゼロからスタートする人には、情報が足りないことがあります。特に、「1から10まで教えてほしい」と思っている人には、それに応えうる書籍は少ないと思ってください。
買ってしまってから、「このテキスト、失敗だった」ということが無いようにするには、前にも書いたように、本の中身を確認してから買うのが良いと思います。ネット本屋で、タイトルだけ見て買うのは、失敗のリスクが高いと思ってください。(アマゾンの中身検索でも、なかなか分かり難いです)
花のハウツー本は、カラーページが多いためか値段が高めなので、買ってから意図したものと違うとわかった時には結構がっかりします。
個人的にお勧めしたいのは、最初の1冊は、薄くて安い本で、でも材料の扱い方から画像つきの説明があるものを探すことです。単行本のコーナーにそのような本が無ければ、雑誌コーナーで基本技術の説明が載っているようなものが無いか見てみましょう。プリザーブドフラワーの雑誌などは、花材の扱い方が丁寧に説明されていることがあります。
私が初心者の方に勧めたことがある本の実例を出しますと、フラワーアレンジメントのハウツー本で、このような本があります→はじめて、フラワーアレンジメント (手づくりの基礎・スタートシリーズ)
公式テキストで学ぶ
一般書籍ではなく、スクールや流派の公式テキストで独自に勉強することも可能です。
多くの場合、スクールの公式テキストは、入会・入門しなくても購入することができます。
入会しないとテキストを売らないタイプの団体のものも、現在はヤフオク!などで買えてしまいます。
公式テキストを入手すれば、教室に通っている人と同じ教材で独学することができます。公式テキストには、あまり一般書籍には出さない技術情報も出ています。
ただし、基本的には、入会・入門した人が手に取っていることを前提として書かれているので、実地・口頭で指導する方が良いタイプの情報が、大きく抜け落ちていることがあるので注意してください。
独学の方法2 動画で花を習う
ジャンルが片寄ってはいますが、花の学習動画というものはかなりあります。DVDになって販売されているものもありますし、動画投稿サイトで無料で公開されているものもあります。
特に技術情報は、静止画で説明されるよりも実演の動画で見る方が分かりやすいので、良い教材になります。
有料で購入する場合には、内容をよく確かめましょう。スクール・流派・フラワーアーティストのプロモーションだけだったり、フラワーショーの様子だけを収録したものだと、技術を教えてもらいたい初心者のニーズには合いません。
無料動画ならば、検索で気軽に探せて便利です。実を言うと、私もワイヤーのかけ方など、自分の方法とは別のやり方が無いか探して見たり、新しい素材の扱い方を人の動画で研究したりしますし、接ぎ木の方法など、ガーデニング情報も探します。
動画の数が多いのは、やはりYoutubeです。見たいものをストレートにワード検索して探すと良いです。プロアマ問わずに大量の動画があります。
動画と書籍ではどちらがより良いか、ということになると、習う人の好きずきによるように思います。自分にとって、ストレスが少ない方を選ぶと良いのではないでしょうか。(個人的には、本当に最初の入り口は、どんどん流れていってしまう動画よりも書籍が良いように感じるのですが、それも私の好きずきなのかもしれません)
独学の方法3 インターネット
上の「動画」の項も大半がインターネットではありますが、動画以外にも花を独習するための情報がネットにはたくさんあります。
それらの情報は、ほとんどが一般の個人が発信しているブログやサイト、snsの記事です。一般の人にも役立つ情報は、大手のポータルサイトなどに生活情報として挙がることもありますが、花のスクールや流派が公式情報として出しているケースはほぼありません。
個人の発信することは、すべて「自己責任」で使用しましょう。実際に、「ちょっと間違っている」と思う情報も見られます。
このような、個人発信の情報で、花の習い事に必要な情報が一か所で全部見られるということは無いです。単発の情報を細切れで出すのが普通のやり方です。よって、体系的に学習情報を網羅しようと思ったら、かなりネットサーフィンしなければなりません。
その作業を楽しめる人は、ネットから情報収集するだけでマイペースに独学していくこともできるでしょう。
あらかじめ了解しておいてほしいのですが、学習者が本当に知りたい核心の情報や、技術者が無料でなど出す気になれない情報は、ネットで探すのは苦労します。絶対に探せないとは言いませんが、「本を買った方が早いな」と思う程度には苦労するでしょう。
情報を発信できるような専門的な領域に入った人であればあるほど、自分の技術情報を有料で公開する術を持っていますし、無料公開できない理由も持っています。
たとえば、私、管理人は、草月流の技術を自分のブログですべて公開したりしません。私は自分の稽古場を運営しているので、技術はそこで有料公開するべきだからです。
独学の方法4 通信講座で花を習う
厳密にいうと「独学」ではないのかもしれませんが、「お教室に通わず、自分一人で作業する」という意味では、通信講座も一人でできます。ただし、写真や動画やレポートを講師に送って(ジャンルによっては制作物を送ることもあるかもしれません)講評・指導を受けるので、すべてを一人ではできません。
この方法は、専門家の指導が受けられるので、安全な学習方法です。きちんと習いたいのだが、どうしても教室に通うのが億劫な人や、通信の方が気楽にできる人、通う時間が取れない人などは、検討する価値があります。
花の通信講座のスタンダードな学習方法は、作成方法を学ぶジャンルでは、テキストやDVD、道具、資材などが送られてきて、決まった締め切りまでにテキストの通りに作成し、その画像や質問したい事項を講師に送り、講評や解説を受ける、というものです。
知識を学ぶタイプのジャンルでは、テキストやDVD、問題集が送られてきて、自分で独習して問題を解いたりレポートを書くなどし、決められた提出物を締め切りまでに送り、送ったものが添削されて返送される、というものです。多くの講座で、講師に質問もできるようになっています。
花や植物に関連する習い事の中で、知識系の資格を取るものは、通信講座のみのものもありますし(例:ローズコンシェルジュ、ガーデンコーディネーター)、フラワーアレンジメントの世界では、何十年も前から通信講座があります。通信は珍しい習い方ではありません。
独学の方法5 自分の感覚のみ
制作・創作系は、何の手がかりもなしに、自分のセンスだけでトライアンドエラーを繰り返して学んでいくことも不可能ではありません。しかし、誰にでもできるものではありません。
飽くなき探求心・創ることへの興味・一人でモチベーションをキープする力、それらを操ることに喜びを見出しながら自分の道を切り開いていける……そういう人であれば、人真似にならない独学こそ、素晴らしい創作への入り口になることもあるかもしれません。
独学のデメリット
独学で学ぶ際にデメリットがあります。
デメリットの代表的なものを挙げると、
- 指導者が手を添えれば一回でわかることが、一人ではなかなか分からない
- 基本的な段階の技術を間違って覚えてしまっても、誰も訂正してくれない
- 独りよがりに陥りやすい
- 情報のアップデートが難しい
- 自分の実力のほどがわからない
- 資格を取るのは難しい
↑このようなものがあります。
上記のようなデメリットがあっても、自分は独学の方がずっと良いと思う人は、独学で良いのだと思います。
上記の中で、一番最後に挙げた「資格が取りにくい」という項目のみ、下の項で解説します。
資格が取りにくい
知識系
知識系の資格は、完全に一人で勉強してとれるものと、認定教室のようなところに通わないと取れないものがあります。
自分の取りたい資格が後者であれば、独学では取れないことになります。
独習すれば良いタイプの資格でも、合格が難しいかもしれないと思ったら、ネットで資格取得者の経験談などを探して見ておきましょう。
また、合格率は問題ないと思っても、受験料が高い場合と受験の機会が少ない場合には、先人の情報を探して見ておくことをお勧めします。
資格試験には、出題を想定していないと慌てるような問題が出ることがあります。想定さえしていれば楽にクリアできた試験に、そのせいで落ちることもあり得ます。そんなときに、受験料が安くていつでも再受験できるものならそれほど困りませんが、何万円もかけて、一年後にしか再チャレンジできないとなるとモチベーションも薄れます。そして、何よりもったいないです。
指導者がいない環境を自分で選ぶのであれば、情報収集も自分でしっかりしなければなりません。
制作・創作系
モノを作る技術を修めて取る資格は、独学では取りにくいです。
そもそも教室に通わないと取れないものが多いのですが、自分よりもうまい人の技術を見ないと上達が難しいということも大きな理由です。
一人でコツコツと勉強するだけで人よりも高い技術を身に着けられる人は確かにいます。しかし、それができるのは、一種の特別な人です。
また、技術は習得すれば習得するほど、「人の仕事を見ると、自分がさらにレベルアップできる」ということに気づいていきます。そのため、自発的に独学から離れたい欲求が出てくるものです。
教室に通うことを義務付けられていない花の資格の一つにフラワー装飾技能士があるのですが、この検定試験を通るためには、多くの人がスクールに通います。もしくは、花屋ですでにこの資格を取った先輩にマンツーマンの指導を受けたりして対策します。
そうしないと、実際には高い技術の領域に到達するのは難しいのです。
いつか限界がやってくるかもしれない
上の項でも、記事の冒頭でも書いているのですが、花の勉強を独学で進めていくと、いつかその状況が物足りなくなり、上達に限界を感じるときがやってくる可能性が非常に高いです。
しかし、「独学の方がむしろ新しい扉を開いていける」、「個人の楽しみは個人で完結したい」、「それほど深く入り込みたい気持ちが無いので、初歩だけ独学で学べば十分」……というような、独学向きの動機を持っていれば、少なくともその動機が満足される間は独学で良いのでしょう。
もしも、満足できない日が来たら、そのときには独学以外の方法を探せば良いのですから。
(個人的には、講師業を目指して資格取得したい人には、独学だけでない方が良いのではないかと思っています。先生や先輩に教わった体験は、後に大きな財産になり得ます)
独学で花の創作家になれるもの?
上の項では、「独学だけではいつか限界がくるかも」と書きましたが、そんなものをものともしない才能と情熱があれば、自分一人の力でプロの創作家になることも可能だと思います。
誰でもなれる、とは思わないでください。人より抜きんでた何かを持っている人なら、その可能性もあるだろう、ということです。
大きな独創性を持った人、その人だけの宇宙を強固に持った人は、むしろ人に習うよりも自ら道を切り開く方が素質に合っていることもあるでしょう。
何事も、不可能と決めつけることはできません。独学で花の創作家になることも、人によってはきっと可能です。
あくまでも「人によっては」です。その道筋も、とても苦労して進んで行くことになるのか、軽々と進んで行くことができるのか、それも「人によって」異なるでしょう。