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いけばな(華道)系資格……草月流師範

草月流師範

草月流師範とは? どんな勉強をすれば取れるのか?
どんな階級があるのか? 免状はどこで取れるのか?
ほかの流派とくらべてどうなのか? 管理人はどんなふうに草月流師範になったのか?
などの情報を紹介します。

草月流師範:概要

草月流師範は、草月流の指導資格を持っている人を指します。草月流から「師範証(=師範免状)」の発行を受けている先生のことです。
この記事では、師範免状についての解説をしていきます。

草月流の資格には、12段階あり、下から

4級修業証→3級修業証→2級修業証→1級修業証→
4級師範証→3級師範証→2級師範証参与→2級師範証常任参与→1級師範証総務→1級師範証常任総務→1級師範証顧問→1級師範証理事

と、なっています。上記の中で、「師範」と呼べるのは、太字で書いたものだけです。師範(太字)か、そうでないかの違いは、教えられるかどうかです。
太字の「4級師範証」以上の人は、公に「草月流」を名乗ってお弟子さんを集めることができますし、お弟子さんにお免状を出してあげることもできます。

お免状を出せる範囲は、自分が持っているお免状の一つ前まで。つまり、「3級師範証」を持っている人は、自分のお弟子さんがどんなに上手くても、「4級師範証」までしかとってあげられません。(先生より弟子の階級の方が上というのは、普通はありえませんので、当然です)

ちなみに、特におすすめはしませんが、生徒にお免状を出すつもりが無いのであれば、師範証など無くても教えることは可能です。
教えられる側にも、教える側にも、正式な草月流のお免状のやり取りは無い、との合意があれば、指導することはルール違反ではありません。このような形態で指導している先生は実際に存在します。

また、お免状は、一度取り始めたら最後まで取るというものでもなく、個人の意思で「ここまで」と思うところまで取れば良いと思います。ただいけばなを楽しみたいだけなら、一つも取らなくても不都合はありません。

草月流門弟である管理人の、完全なる「個人の感覚」としては、「本格的にやっているな」と感じるのは「2級師範持ち」くらいからです。しかし、これは流内の人間の感覚なので、世間的には「師範」と名のつく免状であれば、どれでも「すごい」と言われる対象かもしれません。

草月流は、「お免状」「証書」という言い方がスタンダード

免状のことを、なんと呼ぶかは、各流派でクセがあるというか、習慣の違いがあるのですが、草月流では「免許」という言い方は基本的にはしません。
大体、「免状」とか「証書」と言います。書面の正確な名称を言うなら、下に貼ってある画像を見てもらえば分かりますが、「修業証明」です。

また、よく世間で言われる「免許皆伝」という言葉も、草月流では使う習慣がありませんので、師範証を取っても、「私は草月流の免許皆伝です」という人は居ません。

草月流師範免状を取るには、テキストに沿った勉強からスタートする

草月流の免状を取るには、まず最初に「テキスト1・2」という教科書を使って勉強を始めます。

「テキスト1・2」は、「テキスト1」のブロックと「テキスト2」のブロックに分かれていて、それぞれに、基本の花型+自由生けで、20単位を取るようになっています。(つまり、1と2を合わせて40単位あります)

単位を取るごとに、先生が教科書に印を押し、「テキスト1」のブロックが終わった段階で4級修業証が、「テキスト2」のブロックが終わった段階で3級修業証が申請可能です。(お免状を申請しなくても、テキストは進めていけます)

「1・2」が終わった人は、「テキスト3・4」に進みます。「3・4」も、「1・2」と同様に、中で3のブロックと4のブロックに分かれています。
型の勉強は、「テキスト2」までで終わるので、「テキスト3・4」はテーマを与えられて自由に生ける稽古を、それぞれ20単位受けます。
3のブロックが終われば、2級修業証を、4のブロックが終われば1級修業証を申請できます。

入門から、1級修業証にいたるまで、全部で80単位ありますので、仮に、月に3回お稽古に通い、毎回1単位こなすとすると、2年ちょっとくらいかかる計算になります。ここまでは、師範ではない免状で、師範免状を取るには、さらに「テキスト5」を学習します。

「テキスト5」は、「1・2」「3・4」の基本的な学習に比べると、かなり専門性の高い学習が含まれてきます。
「5」では、30単位の稽古をして、これが終わると「4級師範」を取ることができます。つまり、テキストを「5」まで全部終えれば、教えられる免状が取れ、晴れて草月流師範となれます。

テキスト終了の後には、自主的な勉強を

「テキスト5」を終了すると、その先には教科書的なものはなく、自主的にテーマを見つけて勉強を重ねていくことになります。
4級師範取得後の免状は、1級師範証常任総務までは、先生の判断で無試験で昇格していきます。途中、級を飛ばすことはできず、必ずすべての級を経て行く必要があります。

いつ「名前」をもらえるか

いけばなの名前、いわゆる雅号というものがあります。
雅号とは、芸事をする際の芸名みたいなもので(勅使河原蒼風も、小原豊雲も、本名ではなく雅号です)、これを持つと「いけばな家を名乗っていい」ものととらえられるため、
「名前をいただきたい」
という思いでいけばなを習う人は少なくありません。

草月流では、雅号を本部に登録できるのは、1級修業証申請のときからです。つまり、師範になる前に、雅号は持てるのです。とりあえず雅号が欲しいだけなら、師範になる必要はありません。

草月流を仕事にするための免状は……

楽しみで草月流を習うのであれば、「免状をここまで取るべき」という考え方は不要です。
しかし、草月流の資格を使って収入を得ようと真剣に考えている人には、
「1級師範までは、ぜひとも取っておきたい」
と言いたいと思います。

なぜかというと、会社の華道部の先生として招かれたり、サークルの講師を引き受けるときに、必要な武器だろうと思うからです。「2級師範以下」では、講師の選考で有利にはなりません。
現実には、「1級師範よりも腕が良い2級師範」は存在します。しかし、形式上のことであっても、それを満たせば世間が認めてくれるというなら、私は、
「1級師範総務でよいから、1級を持っていたらどうか」
と思っています。理想は、最高位の「1級師範理事」を持つことですが、そこまでは取るつもりのない方にも、「せめて1級と名の付く資格を」と伝えたいです。

草月流理事・顧問の資格は、試験あり

草月流の、上位二つの資格である1級師範顧問・1級師範理事だけは、昇格のための試験があります。

顧問試験、理事試験は、毎年1回行われます。顧問、理事のいずれも、実技試験1テーマ、筆記試験2テーマ(花型図&文章)です。合格率は非常に高いです。

草月流のレッスン料金は、各教室でいろいろ

草月流のレッスン料は、各稽古場で異なります。ネットや、お稽古情報雑誌などで複数の教室を探して比較してみるとよいでしょう。↓のサイトなどをご参考にどうぞ。

「草月流師範」の資格は、他流より得な資格なのか?

草月流いけばな自体に興味があって、そのために「草月で免状を取ろう」と考えている人は、あまり損得を考えている人はいないと思いますが、
「何かしら、花の資格を取りたい」→「それにより、趣味を超えて仕事にもできる可能性を手に入れたい」→「だったら、どの資格を取るのが有利なんだろう」 という考えで、花の資格取得を検討する人もいるでしょう。

そういう意味で、
「草月流師範の資格って、良いんですか?」
と聞かれたとしたら、私なら、
「有利か、という意味では、なんとも言えない」
としか答えられません。

個人的には、現在の仕事につながった免状なので、
「私には、かなりいい選択だったと思う」
ということは言えます。
しかし、「最良の選択であった」と断言することはできません。ほかの流派を、私は経験していないからです。

ただ、いけばなの資格で、どこが有利なのだろうと考えた場合、「草月流」というのは、悪くは無い選択だと思います。
三大流派の一つですし、実力本位制を認める土壌のある流ですし、新しいことや目立つことを歓迎する流なので、腕一つで挑戦してみようと思うなら、やりがいを見出せるのではないでしょうか。

また、関東に住んでいる人にとっては、関西発祥の流派よりも、東京で生まれた草月流のほうが、気軽に本部へ行けるのが楽で良いです。
「本部が近いほうが楽」と実感するのは、かなり本格的に習い始めてから思うことなのですが、現在東京に住んでいる私は、
「草月流の本部が東京で、本当に良かった」
と思っています。東京が本部の草月流は、流の一番大きい展覧会も、家元に指導を受けられる講座も、主に東京で行われます。地方の熱心な先生方は、大きな時間と交通費をかけて東京まで来るのです。もしも私が地方に住んでいたら、そんなことはできずに、本当は参加したい展覧会や講座を、ほとんどあきらめてしまっていたでしょう。

いけばな流派で、東京に本部がある流は貴重ですので、東京に近いところに住んでいる人にとっては、草月流は交通費と移動時間がだいぶ浮くと言えます。

他流よりも、早く師範免状が取れるかどうかということについては、特に草月流が早く取れるとは思いません。(他流から草月流に流れてきた人から、「草月流のシステムは、免状取得が早い」という話しは聞いたことがありません)
主要流派は、免状取得にかかる時間や費用は、ほぼ足並みがそろっているものと思われます。

参考:管理人は何年かかって草月流の免状を取ったか

管理人自身が取った免状の画像を、参考までに載せてみます。一番古い免状と、一番新しい免状の二枚にしてみました。つまり、最初に取る免状と、最後に取る(=最高位の)免状です。

↓一番最初に取った免状。4級証です。

↓一番上の免状。理事の免状です。

この二枚の免状は、大きさが大分違います。4級証は、25×15.5cm。理事免状は、52×37.5cmです。理事免状の方は、普通の賞状額に入れやすい大きさになっていると思われます。

免状を取った時期を見てみると、私は昭和56年に4級証を取ったことが分かります。私は、昭和53年入門ですので、最初の免状を取るのに3年かかりました。これは、少々遅めのスピードです。

理事の免状は、2008年に取りましたので、理事までの年月は、私の場合、入門後30年。4級証を取ってから27年かかったということになります。どのくらいのスピードで免状を取るかは人それぞれなので、何年くらいで取るのが適正かと言うことはできません。

理事免状に関してのみ言いますと、私は30代で理事を取っており、この年齢は、「かなり早い」と言って良いと思います。理事は、70代や80代で取る人もいる資格です。


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